第8章
絵里視点
二月の下旬にもなると、病状は急速に悪化し始めた。最新の化学療法もほとんど効果はなく、がん細胞はまるで野火のように広がっていった。気性はますます荒くなり、どんな些細なことでも癇癪を起こすようになった。
和也は、私の格好の八つ当たりの対象になった。
「スープが熱すぎるわ!」私は彼が差し出した薬を突き返した。
「すぐにもっと冷たいものを持ってくるよ」
「今度は冷たすぎるじゃない! 少しは気を遣えないの?」
「ごめん、温め直すよ」
「もういい! いらないわ!」
和也は途方に暮れたように私を見つめた。その瞳には、悲痛と無力感が満ちている。それでも彼は決して言い返さず、た...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


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